2015年10月11日日曜日

早坂文雄の天才の片鱗

日付が変わりましたが昨日はこの10月15日が没後60年の早坂文雄を記念する演奏会に行きました。

○東響現代日本の音楽の夕べシリーズ第18回
早坂文雄没後60年記念コンサート
開演:2015年10月10日(土)15:00 ...
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
曲目:早坂文雄作品
映画「羅生門」から真砂の証言の場面のボレロ
交響的童話「ムクの木の話し」
交響的組曲「ユーカラ」
管弦楽:東京交響楽団
指揮:大友直人


今日は真の天才の音楽に接した。

映画「羅生門」から真砂の証言の場面のボレロ
ラヴェルのボレロとほとんど同じ出だしから全く異なる音像が立ち上がる。日本風な感覚とはまた170度くらい異なるモダンなテイストながら全体としては和風な感覚なのはこの時代の邦人作曲家が目指してなし得なかったものであろう。
ラヴェルのと異なり静寂から始まり静寂に終止。

交響的童話「ムクの木の話し」
スクリーンへのアニメーション上映付き演奏。
戦時中「海の神兵」などのアニメーションを上梓しながらその技術のほとんどを戦後破却されたと思わせるほどに稚拙ながらその何もない中でよくぞここまでという作りのアニメーションに、21世紀の今日でもまだ先を行く先鋭的な音楽が付された作品である。
クレジットから日本国憲法の公布と時をほとんど同じくしている当作品では冬を象徴するオオカミのような氷の魔物が周囲を全て凍結してその手下が木を凍らせて鉤十字にしてしまうなど進駐軍(が観ること)を意識したような作りが見られるがそれらは聖母マリア風の春の女神によって一掃されるなど全体主義への民主主義の勝利のようでありながらその実は戦時中までを冬の時代戦後を春の訪れとして描いており、それを追いかけるように管弦楽が禿山の一夜風の冬から独創的な春の音楽を導く。
フルートが全員ピッコロに持ち替えて凄まじい鳥のさえずりを上げ、風音器・雷音器もないのに凄まじい暴風の様子が描かれていた。

交響的組曲「ユーカラ」
ほとんど交響曲に匹敵する作りであるが独創的。
赤にライトアップされたクラリネットの超絶独奏に始まり武満徹的二つの弦楽合奏の楽章に挟まれて両端に大規模な管弦楽を持つ。
全く類例を見ない作りでこれを聴くと弟子筋の武満徹や佐藤勝がまるで早坂の縮小再生産のようだ。

以上三曲とも弦と打楽器を中核に据えて高音で勝負していて、聴後感はまさに風(Breeze)が通り過ぎる如し。

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