2015年9月12日土曜日

演奏会聴取記録・2015年9月4日 山田和樹の別宮貞雄/交響曲第1番

○日本フィル第673回東京定期演奏会
開演:2015年 9月 4日(金)午後7時
会場:サントリーホール
曲目:
ミヨー/バレエ音楽《世界の創造》
ベートーヴェン/交響曲第1番
イベール/アルト・サクソフォンと11の楽器のための室内小協奏曲
別宮貞雄/交響曲第1番(日本フィル・シリーズ第7作)
サクソフォン:上野耕平
指揮:山田和樹

ミヨー/バレエ音楽《世界の創造》
この日はミヨーの誕生日。
ミヨー--な曲。
途中からピアソラ風になったり、ガーシュイン風になったり。
オーボエがやたらと主旋律で活躍。サックスがそれに次ぐ。
クラリネットは騒がしい役回り。
本プログラムの前奏曲として誠に相応しい。(あとで気づいたのだが、ミヨーは別宮貞雄の先生なのだが後刻演奏される別宮の曲とは正反対の性格のやんちゃな曲で、それゆえこそ前奏曲に相応しいのである。)

ベートーヴェン/交響曲第1番
破天荒。度肝抜き。
まずもって倍管。4-4-4-4-4-2。
第1楽章再現部に入るところで曲が完全停止。そこから跳ぶ!
第2楽章冒頭第2ヴァイオリンのソロ!で始まりその後弦楽4重奏に!!(正確には弦楽3重奏まで行って第1ヴァイオリンから合奏に、だったと思う)まるでマーラーの5番の第3楽章の中間部だ!!
速すぎず遅すぎずスケルツォでもメヌエットでもない第3楽章はまさにぴったりのテンポ、
異様に遅い開始の第4楽章、微速漸進!
随所に瑞々しい輝きがあり、燦めきがあり、飛翔がある。そのさまはまさに水面を翔ぶ青魚のような生気に満ちている!
この演奏をベートーヴェンが聴いたらバーンスタインの自作5番を聴いたショスタコーヴィチのように舞台に駆け上がって山田和樹を抱きしめるだろう!!!
倍管は事前の聴く者の予想を裏切り音量増強でなく(クラリネットは若干増量に使われていたのは否めないが)飛翔の高低差を大きくつけるための跳躍台に用いられていたようだ。

イベール/アルト・サクソフォンと11の楽器のための室内小協奏曲
本プログラム最も気の利いたお洒落な曲。(ミヨーはじゅ。には多少洒脱すぎた)
小夜間飛行といった趣の曲であり、ベト1とベク1の間奏曲として誠に相応しい。
夜間飛行という意味では大澤壽人のピアノ協奏曲第3番と通暁するところがあり、イベールのほうが年代が先なので大澤もどこかで聴いたのかもしれない。

別宮貞雄/交響曲第1番
素晴らしい。曲が素晴らしい。演奏が素晴らしい。
実はベト1が倍管で4管になっていて別宮1が3管なので管編成はこちらのほうが小さいくらいだが、前述のようにベト1の倍管は厚ぼったさは皆無ですべて高き飛翔へと振り向けられていた。
ベク1は曲調が仄暗く沈潜する方向の中で光明を底辺で探し求めている趣である。
それをこの日の演奏を介すると若々しい感性で乗り越えんとしているように聞こえる。
ベト1も若々しいので、青春の持つ明るさと仄暗さがコインの表裏のようにベト1とベク1で描き分けられる。(ベートーヴェンもこの後耳が聞こえなくなり暗いほうにまっしぐらになるのを考えると悲しい気持ちになる。)
演奏は慎重を期しており、精緻綿密であるが、こちらも手探りの第1楽章、激しいが突き抜けることのない第2楽章、さらに深く沈潜する第3楽章を経て、実はここまで通して水底でうごめいていた青魚が第4楽章で一気に水面を突き抜けて飛翔する感じ!!先日の渡辺宙明の時(8/30)にも感じたが、なんなのだろうこの戦後昭和の突き抜け感は。芥川也寸志もそうだと思うけど当時のTVドラマ「事件記者」(こちらの音楽は小倉朗)的な多忙感と緊迫感に満ち溢れている。この仄暗さの中から突き抜ける飛翔感・跳躍感こそが本日の演奏の扇の要で、まさに今プログラムの4曲を貫く新ヤマカズの真骨頂なのだった。

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